整骨院・接骨院の開業では、保健所への届出だけでなく、受領委任の申請、労災・共済対応、税務手続きなど、複数の申請を正しい順序で進める必要があります。
特に保険請求に関わる手続きは、1つでも不備があると開業後すぐに請求ができないケースもあるため注意が必要です。
本ページでは、開業時に必要となる「各種手続き・届出」に絞り、2026年時点の制度に基づいて、提出先・必要書類・注意点を実務ベースで整理しています。
※ 開業全体の流れや費用については、別ページ【整骨院・接骨院の開業完全ガイド】をご参照ください。
1.開業手続きの全体像と進め方(スケジュール)
2.保健所への届出(施術所開設届)
3.受領委任制度の申請と保険請求の開始手続き
4.労災保険指定機関の申請
5.共済・防衛省など一部保険者への追加手続き(該当する場合)
6.税務手続き(開業届・青色申告・インボイス制度)
7.よくある申請ミスと開業トラブル(失敗例)
整骨院・接骨院の開業手続きは、「思いついた順に進める」と失敗しやすく、正しい順序で進めることが非常に重要です。
特に注意したいのは、保険請求(受領委任制度)はすぐに開始できないという点です。必要な届出や審査が完了するまでに一定の期間がかかるため、スケジュールを逆算して準備を進める必要があります。
▶ なぜ「順番」が重要なのか?
整骨院の開業では、「施術所開設届」と「受領委任の申請」が密接に関係しています。
例えば、受領委任制度の申請には保健所に提出した開設届の写しが必要となるため、開設届が未提出の状態では保険請求の手続きを進めることができません。
また、受領委任の審査には通常1ヶ月以上かかることもあり、この期間中は保険診療としての請求ができない状態になります。
そのため、実務上は以下のような流れで進めるケースが一般的です。
・ 開設日を形式上先に設定
・ 速やかに開設届を提出
・ 並行して受領委任の申請を進める
・ 承認後に本格的に保険診療を開始する
この順序を理解していないと、「開業したのに保険請求ができない」という事態になりやすいため注意が必要です。
▶ 2026年時点で注意すべきポイント(制度面)
近年、整骨院の開業手続きに関する制度は一部見直しが行われており、特に以下の点には注意が必要です。
・ 施術管理者の要件厳格化
実務経験(原則3年)および研修修了が必要
・ 受領委任制度の審査の厳格化
書類不備や記載ミスによる差し戻しが増加
・ 電子申請・電子請求の普及
保険請求(レセプト)はオンライン対応が主流に
・ インボイス制度への対応(税務)
自由診療の割合によっては登録の検討が必要
これらの制度変更により、従来よりも「事前準備の質」が重要になっています。
整骨院・接骨院を開業する際、最初に行うべき行政手続きが「施術所開設届」の提出です。
施術所として営業するための必須届出であり、保険請求の申請にも必要となる重要な書類です。
提出先は、施術所所在地を管轄する保健所となります。
▶ 提出のタイミングと流れ
施術所開設届は「開設後10日以内に提出」と定められていますが、実務上は以下の流れで進めるのが一般的です。
・ 事前に保健所へ相談(構造設備・名称の確認)
・ 開設日を設定し、必要書類を準備
・ 開設後速やかに開設届を提出
・ (地域により)立入検査を実施
・ 不備がなければ受理(控えを取得)
※ 受領委任の申請には開設届の写しが必要となるため、提出の遅れはその後の手続き全体に影響します。
▶ 主な必要書類
必要書類は自治体によって異なりますが、一般的には以下の書類が求められます。
・ 施術所開設届(所定様式)
・ 施術者の免許証の写し(原本提示)
・ 施術所の平面図(設備・ベッド配置・換気等を明記)
・ 所在地の案内図
・ (法人の場合)登記簿謄本・定款
・ (賃貸の場合)賃貸契約書の写し
様式は各自治体ごとに異なるため、必ず管轄保健所の公式サイトで最新の書式を確認してください。
▶ 事前相談の重要性
保健所への事前相談は任意とされていますが、実務上はほぼ必須といえます。
構造設備基準を満たしていない場合、開設届の受理後に修正を求められることもあり、結果的に開業スケジュールが遅れる原因になります。
図面や設備計画の段階で確認を受けておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。
参考(公式情報)
・ 厚生労働省「保健所所管区域案内」
※ 地域によって要件や運用が異なるため、必ず最新の公式情報をご確認ください。
整骨院・接骨院で健康保険を取り扱うためには、「受領委任制度」の申請が必要です。
これは、患者から施術費の一部負担金のみを受け取り、残りを保険者へ請求できる仕組みであり、保険診療を行うための前提となります。
この申請を行わない場合、施術費は全額自費扱いとなるため注意が必要です。
▶ 申請先と基本の流れ
受領委任の申請は、施術所所在地を管轄する地方厚生局(厚生支局)へ行います。
基本的な流れは以下の通りです。
・ 保健所で施術所開設届を提出(控えを取得)
・ 必要書類を準備
・ 地方厚生局へ受領委任の申請
・ 審査・承認
・ 受領委任の承認(登録番号の付与)
・ 保険請求(レセプト提出)開始
※ 開設届の写しが必要となるため、先に保健所の手続きを完了させておく必要があります。
▶ 保険請求を開始できるタイミング
保険請求は、受領委任の承認後に開始可能となります。
申請から承認までの期間は地域や状況によって異なりますが、一般的には1ヶ月前後かかることが多く、この間は保険請求を行うことができません。
そのため、開業直後から保険診療を行う予定の場合は、開設届提出後できるだけ早く申請を行うことが重要です。
▶ 主な必要書類
必要書類は地域により異なりますが、主に以下の書類が求められます。
・ 受領委任の申出書・確約書
・ 施術所開設届の写し
・ 柔道整復師免許証の写し
・ 施術管理者に関する書類(選任証明・研修修了証など)
・ 実務経験期間証明書(原則3年分)
※ 様式・要件は変更されることがあるため、必ず管轄の地方厚生局の最新情報をご確認ください。
参考(公式情報)
・ 厚生労働省「地方厚生支局の案内」
※ 申請様式や要件は随時更新されるため、必ず最新情報をご確認ください。
整骨院・接骨院で労働災害(仕事中・通勤中のケガ)に対応するためには、「労災保険指定機関」の申請が必要です。
この指定を受けることで、患者の自己負担なし(または最小限)で施術を行い、費用を労災保険へ請求できるようになります。
▶ 申請のタイミングと流れ
申請は、施術所所在地を管轄する労働基準監督署に対して行います。
一般的な流れは以下の通りです。
・ 施術所開設届の提出(保健所)
・ 必要書類を準備
・ 労働基準監督署へ申請
・ 審査
・ 指定通知の受領
・ 労災患者への対応開始
※ 受領委任制度とは別手続きのため、並行して進めることが可能です。
▶ 指定までの期間と注意点
申請から指定までの期間は地域によって異なりますが、一般的には数週間〜1ヶ月程度が目安です。
指定を受ける前は労災としての請求ができないため、開業初期から対応する予定がある場合は、早めの申請が重要です。
▶ 主な必要書類
主な提出書類は以下の通りです。
・ 申請書(所定様式)
・ 施術所開設届の写し
・ 柔道整復師免許証の写し
・ 施術所の平面図・案内図
※ 詳細な様式や追加書類は地域によって異なるため、管轄の労働基準監督署で事前に確認してください。
参考(公式情報)
・ 厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内」
※ 申請方法は電子申請(e-Gov)に対応している場合もあるため、最新情報をご確認ください。
整骨院・接骨院で保険診療を行う場合、受領委任制度の申請により、協会けんぽ・国民健康保険などの一般的な保険者には対応可能となります。
一方で、公務員や自衛官などが加入する一部の保険については、別途手続きが必要となる場合があります。
▶ 対応が必要となるケース
以下のような保険に対応する場合、追加の手続きが必要となることがあります。
・ 国家公務員共済組合
・ 地方公務員共済組合
・ 自衛官(防衛省関係)
ただし、地域や加入団体、運用状況によっては個別手続きが不要、または団体経由で対応できるケースもあるため、事前確認が重要です。
▶ 手続きの考え方
これらの手続きはすべての整骨院に必須ではなく、実務上は以下のように判断されることが一般的です。
・ まずは受領委任制度の申請を優先
・ 開業後の患者層に応じて対応を検討
・ 必要になった時点で追加手続きを行う
特に開業初期は対応優先度が低いケースも多く、過度に準備しすぎる必要はありません。
▶ 手続きの概要
必要な場合は、各共済組合や関係機関へ申出を行い、承諾番号等を取得します。
提出書類や手続き方法は保険者ごとに異なり、郵送またはオンラインでの対応となる場合があります。
詳細については、該当する保険者または所属団体を通じて確認するのが確実です。
参考(公式情報)
・ 地方公務員共済組合協議会「柔道整復療養費受領委任取扱いの申出について」
※ 制度や運用は変更されることがあるため、最新情報をご確認ください。
整骨院・接骨院の開業にあたっては、税務署への届出も必要です。
これらの手続きは保険請求とは直接関係ありませんが、開業後の収益管理や節税に大きく影響します。
特に近年はインボイス制度の導入により、開業時点での判断が重要になっています。
▶ 開業届(個人事業の開始届出書)
個人で開業する場合、税務署へ「開業届」を提出します。
提出期限は開業から1ヶ月以内とされていますが、実務上は早めに提出しておくとその後の手続きがスムーズです。
この届出により、正式に個人事業主としての事業が開始されます。
▶ 青色申告(節税の基本)
節税を重視する場合は、「青色申告承認申請書」の提出が重要です。
青色申告を選択することで、以下のようなメリットがあります。
・ 最大65万円の特別控除(電子申告等が条件)
・ 赤字の繰越(最長3年)
・ 家族への給与を経費計上可能
提出期限は、開業から2ヶ月以内(またはその年の3月15日まで)となっているため、忘れずに対応する必要があります。
▶ インボイス制度(重要)
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応は、開業時に判断が必要です。
整骨院・接骨院の場合、保険診療は非課税取引となるため、必ずしもインボイス登録が必要とは限りません(保険診療は非課税のため)。
一方で、以下のようなケースでは登録を検討する必要があります。
・ 自由診療(自費施術)の割合が多い
・ 法人や企業との取引がある
・ 取引先からインボイス発行を求められる
登録の有無によって消費税の扱いや取引条件に影響が出るため、自院のビジネスモデルに応じて判断することが重要です。
参考(公式情報)
・ 国税庁
・ 国税庁「インボイス制度特設サイト」
※ 制度内容は変更される可能性があるため、必ず最新の公式情報をご確認ください。
整骨院・接骨院の開業手続きは一見シンプルに見えますが、実際には「順序」や「制度理解」の違いによって、開業後の運営に大きな差が出るポイントでもあります。
ここでは、実務上よくある申請ミスやトラブルをまとめて整理します。
▶ 手続き全体に関するミス
・ スケジュールを立てずに手続きを進めてしまう
・ 開業日を先に決めてしまい、申請が間に合わない
・ 複数の手続き(保健所・厚生局など)の関係性を理解していない
特に「保健所 → 受領委任」の順序を理解していないことによる遅延は非常に多く見られます。
▶ 保健所関連のミス(開設届)
・ 平面図と実際の設備が一致していない
・ 消毒設備・換気などの要件を満たしていない
・ 書類の控えを取得していない
開設届はその後の手続きの基礎となるため、小さな不備でも全体の遅れにつながります。
▶ 受領委任制度のミス
・ 開業後すぐに保険請求できると誤解している
・ 施術管理者の要件(実務経験・研修)を満たしていない
・ 書類不備により審査が長期化する
受領委任の承認が遅れると、収益の立ち上がりに直接影響するため注意が必要です。
▶ 労災・共済関連のミス
・ 受領委任と同じ手続きだと誤解している
・ 必要な手続きを把握しておらず対応できない
・ 優先順位の判断を誤る
これらは必須ではないケースも多いため、「必要なものから順に対応する」という考え方が重要です。
▶ 税務関連のミス
・ 青色申告の申請期限を過ぎてしまう
・ インボイス制度の判断を曖昧なまま進めてしまう
・ 会計管理を後回しにする
税務手続きは後からの修正が難しい場合もあるため、開業初期の段階で整理しておく必要があります。
まとめ
整骨院・接骨院の開業手続きは、「保健所への開設届」から始まり、「受領委任制度の申請」を経て、保険請求が可能となるまで複数のステップがあります。
さらに、労災対応や一部保険者への追加手続き、税務関連の届出なども含め、それぞれの手続きには適切なタイミングと順序があります。
特に重要なのは、「手続きを正しい順番で進めること」と「最新の制度を踏まえて準備すること」です。
開業後のトラブルを防ぐためにも、本ページを参考に全体像を把握し、余裕を持って手続きを進めていきましょう。
開業準備のやることが多くてお困りの方へ
レセコンや治療機器の選定、ホームページ制作、集客対策などは、それぞれ個別に検討する必要があり、負担に感じる方も少なくありません。
当社では、整骨院・接骨院の開業に必要なシステムや設備、ホームページ制作、セキュリティ対策まで、まとめてご相談いただけます。
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